アマプラ「プラス松竹」にて。
大庭秀雄監督、岸惠子、佐田啓二、淡島千景、月丘夢路、川喜多雄二、小林トシ子、野添ひとみ、淡路恵子、笠智衆、市川春代、望月優子、須賀不二男出演。
アニメじゃない方の『君の名は』については、
・元はラジオドラマで、その後映画化された。
・ラジオドラマも映画も爆発的に大ヒットした国民的ドラマ。
・銀座で待ち合わせるがすれ違い続ける男女のメロドラマ。
・ヒロインの名前が真知子で「真知子巻」と呼ばれるスカーフの巻き方が昔流行ったことがある。
…と、これくらいの予備知識しかないが、折角“松竹漬け”月間になっているところなのでチャレンジしようと!
二日がかりで、全三部作・合計6時間11分の『君の名は』マラソン。
第1部
昭和20年5月24日の東京大空襲の夜、数寄屋橋の上で互いに命を助け合った若い男女、後宮春樹と氏家真知子は、半年後の二十四日の夜、この橋の上で再会しようと約束した。春樹は別れ際「君の名は」と訊いたが、真知子は名を告げずに立去った。半年後、約束の晩に真知子は叔父に強制された縁談のため佐渡島に居た。その縁談相手浜口勝則は、真知子を気遣い一緒に春樹を探す。そんな勝則の姿に感銘を受けた真知子はつい結婚を決意する。勝則と佐渡の料亭の女中・綾の協力によって春樹を探し当てた真知子は、1年後の5月24日に再会を果たすが、その日は勝則との結婚前日であった。
結婚した真知子を待っていたのは、姑の嫁イビリと勝則から向けられる春樹との浮気への猜疑の眼差しであった。さらに勝則は偶然春樹の上司になったのを良いことに彼を失職させる。その夫のやり口を嫌悪した真知子は離婚を決意するが、既に勝則の子を妊娠していることが判明、世を儚んで佐渡で自殺を試みる。それを止めたのは春樹であった。
第2部
真知子と再会したものの結ばれぬ運命だとわかった春樹は、北海道の友人の牧場を手伝いに旅立った。そこでアイヌ娘のユミに惚れられてしまうが、ユミにはサムロと言う許嫁があった。一方、家に帰った真知子には姑のイビリが炸裂し、結局流産してしまう。その後、北海道で再会を果たした2人だったが、その姿を見たユミは春樹の心の中に自分がいないことを知り、摩周湖に身を投げた。それを見たサムロは助けようと自分も湖に飛び込むが、結局2人とも死んでしまった。さらに真知子に裁判所からの出頭命令が届けられた。勝則が「同居請求手続き」を取ったため、彼女は勝則の元に帰らなければならなくなったのだ。
第3部
裁判所命令に従い東京に戻った真知子は勝則との離婚調停を申込むが、勝則が春樹を告訴していることを知る。春樹と会わないことを条件に告訴を取り下げてもらった真知子は、九州雲仙のホテルで働くことになった。ある日春樹の勤める出版社に勝則が現れ、春樹と再婚しないことを条件にするなら、真知子と離婚してやると告げた。一方雲仙では、真知子は常連客の副島に求婚されていた。副島は春樹と勝則の件を知り、勝則との離婚のために上辺だけ自分と結婚するのはどうかと提案する。急な欧州出張の決まった春樹が勝則と会うと、真知子が副島と結婚すると知らされる。勝則は次官の娘美子との婚約が決まるが、美子は姑との同居をきっぱり否定する。これなら真知子の方が良かったと、雲仙まで迎えに行った姑は肺炎に罹り、真知子に看病されることに。真知子は突然病に倒れ入院、さらに東京に転院することになり、死を覚悟する。スイスでその知らせを聞いた春樹は大慌てで東京に向かう…。
と、ザックリこんな話。
これでも相当に端折っているので、もっと登場人物も多いし、細かいエピソードも大量に仕込まれている。何しろもとになったNHKのラジオドラマは30分98回も有るそうなので、その毎回になんらかの出来事があるだけでも大変な量になる。それを全6時間11分にぶち込んだのだから、真知子と春樹を会わせない、結ばせないための出来事だらけ。大枠の物語だけなら第2部の部分を飛ばしてもいいくらいだが、個人的に面白かったのがこの第2部。正直な話、真知子と春樹がどうなるか?なんてのは、まるっきり結ばれないバッドエンドなんてやって来ないだろうから、最後結ばれてハッピーエンドか、結ばれはしたけどその瞬間に腕の中でどっちかが死んじゃうアンハッピーエンドしかありえない。
この映画で一番面白かったのは、マザコン・サイコ野郎の勝則(川喜多雄二)とその母親徳枝(市川春代)である。最初っから真知子には春樹と言う理想の男性が居ることを知っていて結婚したのに、結婚後に繰り出す卑劣な手口の数々と妻虐め、春樹虐めの数々。それを陰に日向にサポートしつつ、息子支配を続けるイビリ姑。これが一番苛烈なのが第2部なのだ。それが最後の最後の第3部で、華麗に掌返し。「あんな美子みたいな女が嫁に来るくらいなら、真知子さんのがまだ良いわ!」(意訳)と本人に告げてしまう姑のバカ加減とか、突然「僕が悪かったよ」と離婚届を出す勝則とかテキトー過ぎてサイコー。
第2部は、突如意味なくぶっ込まれてくるアイヌ悲恋話とかなんだか意味が分からない要素が多くて、真知子&春樹の恋路を迷路に追い込んでいく仕掛けが楽しいのである。
最終的にはもちろん結ばれてエンドなんだけれど、当時なんでそこまで日本中が夢中になったのか?なんで真知子巻が流行ったのか?真知子(岸恵子)よりも綾(淡島千景)の方が良いじゃん!とか思うのは俺だけなのか?と疑問はありつつも、それなりに楽しい2日間でした。
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