アマプラ「プラス松竹」にて。
山田洋次監督、倍賞千恵子、寺尾聰、下條アトム、松尾村青年会員、統一劇場劇団員出演。
岩手県・松尾村青年会を、統一劇場の職員の倍賞千恵子が訪れ、村での劇団公演を提案する。高額な費用が問題となり、青年会の議論は紛糾するが、青年会会長の寺尾聡の熱意に押され、公演の実施が決まるが、チケット販売や公園の準備で、村は大わらわになっていく…。
一見良い話のようでいて、何とも言えない胡散臭さを感じる。
倍賞千恵子が突然村に訪れて、劇団公演の営業を青年団に持ち掛ける。費用は一切合切が青年団持ち。ここの段階から何かがおかしい。村が何か文化事業をやりたいと希望していて、「統一劇場」なる劇団を知って声を掛けたのなら分る。だが、そんなことは一切なく、本当に飛び込み営業での押し売りだ。当然、村の青年団は紛糾する。
青年団員「誰も見たことのない芝居がどうして素晴らしいとわかるのか?」
倍賞「農村の現状や問題を取り込んで、歌や笑いもある素晴らしい芝居なの。これまでの公演ではみんな喜んでるわ」
ええぇ~っ!誰も他地域の公演を下見に行かないの?
青年団員「あんたたちは利益が出るが、なんで村が60万円のリスクを冒さなければならないのか?!」
倍賞「私たちの劇団はカツカツでやってて、60万円じゃほとんど利益なんて出ないのよ!」
青年団長・寺尾聰「もしも赤字が出たら、オラの牛を売って弁償する!」と叫ぶ。倍賞千恵子、上手いこと田舎の純朴青年を口車に乗せたなぁ…。
一枚800円のチケットは当初は売れず、青年団員たちは村中を宣伝カーで廻り、個別に訪問してチケットを売りさばく。自分の仕事時間も睡眠時間も削って、なんとかチケットを完売する。
そして本番。もちろん大成功。青年団員は皆「俺たちにも出来た!」と成功体験を得て大満足の滂沱の涙。
山田洋次の演出で、何か非常に上手く作られているが、その裏に隠されている胡散臭さを感じてしまうのは、俺の心が腐っているから?
自己啓発セミナーとか、ある方面の思想とか、そんな何かを感じさせる。素直に「良い映画でした」とはとても思えない、“善意かっぱぎ”映画。
本作は「松竹80年記念映画」だそうで、同じ山田洋次の『キネマの天地』(1986)が「松竹大船撮影所50周年記念映画」で、『母と暮らせば』(2015)が「松竹120年記念映画」、最新作『キネマの神様』(2021)が「松竹映画100周年記念映画」。ほかにもまだあるのかもしれないが、山田洋次の松竹記念映画率の高さよ。
https://youtu.be/qxnFqq5KIXQ
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