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2005.07.05

7/5 『宇宙戦争』(スピルバーグ版)

有楽町日劇1で『宇宙戦争』を観る。

レイ(トム・クルーズ)は、ニュージャージーの港湾施設で働く普通の男。別れた妻が息子のロビーと娘のレイチェル(ダコタ・ファニング)を連れ、面会にやって来た。レイは、ごく普通の気まずい週末を過ごす予定だったが、突然異変が起こった。一転俄かに掻き曇り、激しい雷が次々に地面に落ち、そして地中で何かがうごめき始めたのだ…。

ネットでは大変な不評の嵐が吹き荒れているみたいだが、オレはそうは思わない。ある意味、スピルバーグが自分の趣味を前面に押しだした映画だと思う。

オリジナルの53年版は、ヨーロッパでナチス侵攻を目の当たりにしたジョージ・パルが米国に渡った後、冷戦下に製作した映画であり、ウォーマシンの侵攻はそのまんまナチス侵攻による恐怖の再元であった。それはパルのパペトゥーン作品『Tulips shall grow』で描いたスクリューボール軍によるオランダ(?)侵攻と同じ物である。この『Tulips shall grow』で、征服者であるスクリューボール軍は、力によって全てを蹂躙するが、結局は雨によって撃退されてしまう。暴力に対して暴力が勝利を得るのではなく、なんてことない小さな力が勝利し、そしてチューリップ(=民衆)は屈することなく育ち続けるのである。これは細菌が火星人(ベガ星人)に倒され、その後の復興を暗示する『宇宙戦争』と非常に似ている物語であった。

対するスピルバーグ版は“9.11”のWTCテロを経験した後の映画である。53年版のウォーマシンが、丁寧かつシラミ潰しにキチンキチンと端から地域を蹂躙していたのと異なり、ある意味神出鬼没に現れ、徹底的な破壊と殺戮を繰り広げる。本作のトライポッドは、ナチスのようなはっきりとした敵ではなく、突然かつ無差別に攻撃するテロリストなのである。旧作はまさに戦争を描いているから、侵攻するウォーマシンに対して軍隊が----効力がなかったとは言え----対応していた。そして本作では、テロに対して為す術なく殺されてしまう民衆が主人公なのである。だから53年版と違って、この映画では軍隊の存在感が極めて希薄なのだ。

主旨を取り出せば、53年版と本作は全く異なる映画である。
だが、ディテール描写やエピソードは、驚くほど53年版と似ている。
小屋に火星人の電子アイが侵入する場面や、クライマックスで火星人の手がハッチから出てくる場面など旧作にそっくりだし、主人公が暴徒に車を奪われる場面もある。旧作で主役だったジーン・バリーとアン・ロビンソンがカメオ出演しているのもそうだ。そして、多分不評のひとつの理由であろうオープニングとエンディングのナレーションは、旧作に代表される50年代SFで非常によく使われる手法である。

本格SFは多くないとは言え、スピルバーグはこれまでもSF志向の強い作家である。この年代のSF志向の強い作家は、ジョー・ダンテやジョン・ランディスを例に挙げるまでもなく、最近の若いジャンル監督よりも過去の作品へのリスペクト度が高いのが特徴である。そんな中スピルバーグは、ディズニー好きは顕にしても、意外にSF趣味をさらけ出してこなかった。
だが本作はそうではない。
スピルバーグは、H・G・ウェルズの原作、そしてジョージ・パル/バイロン・ハスキンによる53年版に対して、驚くほどのリスペクトをしてみせたのである。ダコタ・ファニングがヒステリックでウザイとか、ティム“デコッパチ”ロビンスは必要だったのかとか、ボルチモアは何故無傷なんだとか、ツッコミどころは色々とある。
最大の謎は、火星人が繁殖させた赤い草だ。どう考えてもテラフォーミングのためだろうに、そこまで用意周到な火星人がバクテリアで死んじゃうの?赤い草の描写が余計だったんじゃないのか?とか。

でもね、そんなことはいいの。
みんながこの映画をどんなにダメだって言ったって、旧作と原作へのリスペクトをこんなにしてくれたから、オレにはある意味感動的ですらあったよ。

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