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2004.08.22

8/22 『サンダーバード』

日劇PLEX3で『サンダーバード』を観る。【思いっきりネタバレ】

ぼんやりと空を見つめ、落書きをしている少年、アラン。実は彼は、世界中で救助活動を行う秘密組織、「国際救助隊 サンダーバード」を運営するトレーシー一家の末息子であった。彼にとって「国際救助隊」は自慢の種であったが、その反面、自分がまだ一員にしてもらえないことが不満であった。
ある日、国際救助隊に怨みを持つ悪漢フッドが、サンダーバード5号をミサイルで攻撃、ジェフたちが救助に向かった隙を突いて、トレーシー島を乗っ取ってしまった。折りしもその頃、シンガポールには未曾有の大型台風が迫っており、人々はサンダーバードの助けを呼んでいる。島に残っていたアランは、レディ・ペネロープ、ティンティン、ブレインズの息子の助けを借りて、宇宙に取り残された家族を助けようとするが…。

バリー・グレイのオリジナル楽曲をアレンジしたメインテーマに乗って、オープニングが始まる。
「ををっ!これはっ!」
驚くほどセンスの良いタイトルバックに、ほとんど持っていなかった期待感が急にアタマをもたげ始める。
…そして約1時間半後、映画が終った。

これは…期待はしていなかったとは言え、オリジナルの『サンダーバード』ファンとしては憤りを覚える映画である。
軽いノリのファミリー向けアクション映画としては、ギリギリ及第点かもしれない。だが、『サンダーバード』のリメイクとしては丸っきり落第だ。

本作のスタッフは、根本的に『サンダーバード』がどんなものなのかが理解できていない。“国際救助隊は救助こそが目的である”----これは口を酸っぱくしてジェフ=パパが言い続けた、彼らの大命題である。
本作の中で、フッドがTB2を使ってロンドン銀行を襲おうとする。大変な事件だが、この時点では救助の必要な事件など起こっていない。フッドの操縦するTB2が着陸したとき、ご丁寧にもTVレポーターが「救助の必要な事件は起こっていないのに、なぜサンダーバードはやってきたのでしょう?!」と言う。そう、救助が必要なはずなのは、“台風に襲われているシンガポール”のはずなのだ。だが、本作ではシンガポールがどうなったのかは、劇中では2度と言及されない。まるでそんな事件はなかったかのように。

ビル・パクストンではなく、僕らの馴染みの“パパ”であれば、フッドは後回しにして(あるいはペネロープに任せて)、まずシンガポールに1号を急行させた筈だ。そしてモノレールに事故が起きてから、ロンドンに向かい、ついでにフッドの件を処理させる。もしも本作のように、アランがフッドを追いかけて事件を解決したとしても、間違っても正式隊員になどしないだろう。逆にパパは、得意満面のアランの鼻を叩き折り、説教をしたはずだ。
「我々の任務は悪人を捕まえることではない。それは警察に任せれば良いことだ。我々の使命は人命救助なのだ」と。

これ以外にも、釈然としない、納得の行かない点は多々ある。

オリジナルでは、パパと5人の息子、ペネロープとパーカー、ブレインズには、それぞれ明快な役割分担があった。
基本的には、まずジョン(あるいは交代要員のアラン)が5号で救助信号を傍受し、パパに連絡する。パパはHQであるトレーシー島で戦略を練る。それに従って、スコットがまず1号で現場に急行、状況確認と戦術を立てる。その後バージルが2号で(必要に応じてゴードンやアランを連れて)現場に到着する。ブレインズのアドバイスを受け、救助を開始する。同時にペネロープとパーカーが支援行動----情報収集や、逃げるフッドを追う等----を行う。
メカにはそれぞれ役割があり、メンバーにも皆役割がある。
だが本作では、登場人物の役割分担はおろか、メカと登場人物の対応さえはっきりとはしない。それもそのはずである。アランを除く全員が、ジェフまで含めて、揃って3号に乗り込んで5号の救出に向かってしまうからだ。だから、家族の中で活躍するのはアラン一人。それも今回はおミソの筈のアランが、だ。これでは、役割分担どころか、誰がバージルで誰がスコットなのかも分からない。

また、やたらと小者然とした発言を繰り返すペネロープにもウンザリ。
元々ペネロープは大富豪の筈である。そんな彼女が、やれネイル・ケアは高いだの、これはブランドものの服だ、だの、そんな昨日今日金持ちになったエセ富豪、プチ成金みたいなことを言ってたまるか!

オレがいくら『サンダーバード』が好きだからと言って、このリメイクが全くの別物であるのなら、こんなに目くじらを立てる気はない。だが、オリジナルの設定を引きずりつつ、納得の行かない展開ばかりをするから腹が立つのだ。

そして一番イヤだったのが、敬愛の気持ちの感じられないオリジナルへの揶揄である。
超能力で操られて、ギクシャクと歩くブレインズをあざ笑ってフッドが言う。
「なんだその歩き方は。まるで人形みたいだな」
こんな台詞を、誰が喜ぶと思っているのだろう?

もうひとつ、ファンへの目配せのつもりなのか、妙な描写が1カットある。
ロンドンに向かうTB1の中でスロットル・レバーを握る人間の手の横で、糸の付いた人形の手が同じスロットルをそっと握る場面がある。どんな意図があるのか分からないが、前述のような台詞があった後では、それはファン・サービスになど、なりはしない。

本作の出来と興行的な失敗によって、御体ジェリー・アンダーソンが準備中のフルCG版『キャプテン・スカーレット』には、確実に暗雲が立ちこめることになるだろう。ワーキング・タイトルのティム・ビーヴァンは、数々の佳作を作ってきたが、SF向きのプロデューサーではない。だからこそジョナサン・フレイクスに白羽の矢を立てたのだろうが、こんなジーン・ロッデンベリーとジェリー・アンダーソンの区別も付かないような“スタトレ野郎”を起用したのは大間違い。
フレイクスは、インタビューで「ジェリーに会った時、素晴らしいシリーズを作ってくれてありがとう、と言った」と書かれていた。だが、あんたがジェリーに言うべきなのはお礼じゃない。謝罪だ。

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